味噌の豆知識

味噌料理

みそ汁の具 & みその素朴な疑問

具に合わせてだしは変えたほうがよいですか?

うま味の相乗効果を期待するという意味では、魚介類など動物性食品を具にしたときは植物性食品(昆布だし)で、逆に、野菜などあっさりしたものを具にしたときは、煮干しやカツオ節で濃い目のだしをとると味にコクが出ます。しかし、特に調理上の優劣はありません。またアサリやカニなど、コクのある魚介類を具にしたときは、それからもよい味が出るので、だしは控えめにするか、または用いなくてもよいでしょう。
みそ汁のうま味は、みそ、だし、具(実)のそれぞれが持つうま味が混然一体となって生まれます。ですから、だしをしっかりとることは、おいしいみそ汁を作るうえで欠かせません。また、みそ汁には濃いめのだしがよく合います。
だしをとるために使われる材料は、主に昆布、カツオ節(削り節)、煮干し、干しシイタケなどです。昆布や干しシイタケのもどし汁で作るだしは、精進だしと呼ばれ、精進料理や懐石料理に使われます。昔から家庭でよく使われてきただしは、カツオ節や煮干しです。
それぞれのうま味成分を見ると、昆布にはアミノ酸系のグルタミン酸、干しシイタケには核酸系のグアニル酸やウリジル酸などが含まれます。また、カツオ節と煮干しには、動物性食品特有のイノシン酸が含まれています。それぞれのうま味成分は、単独ではそれほど強く感じませんが、組み合わせると、相乗効果によってうま味が一気に増します。みそ汁のだしは、昆布とカツオ節、煮干しと干しシイタケ、というように好みによって組み合わせるとよいでしょう。

昆布だしをとるときは、昆布にはさみで切り込みを入れた後、あらかじめ水に30分〜1時間ほど浸けて成分を流出させておきます。その後火にかけ、煮立ったら昆布を引き上げます。

カツオ節を使う場合は、できるだけ丸節を用い、だしをとるつど削ったほうが風味がよくなります。市販の削り節は密封保存し、風味をとばさないように注意します。たしをとるときは、沸騰した湯に削り節をいれ、再び煮立ったら火を止めて、アクを除き、削り節が沈むまで待ちます。その後、ざるにぬれた布巾をのせ、だしを流しいれて漉します(一番だし)。

煮干しの場合は、頭と腹わたを除き(腹わたの部分には苦味と渋味がある)、だしが出やすいように裂いておきます。水に30分以上浸けてうま味を出し、そのまま水から火にかけます。 みそにはたくさんの種類がありますが、それぞれのみそと相性のよい具は?

旬の材料であれば、どのような食品でもおいしいみそ汁の具になり得ますが、みその種類ごとにその特徴を生かせるような具を選ぶと、さらにおいしいみそ汁が作れます。以下は相性のよいみそと具の組み合わせ例です。

米みそ、白色甘口みそ

白みその甘みそは、すっきりした甘味が特徴ですから、具には甘味を損なわないようなクセのない淡白な食品が合います。里芋、白身魚のすり身、エノキダケ、あわ麩、シイタケなどを取り合わせてみましょう。

米みそ、淡色辛口みそ

淡色辛口みそは、塩の馴れた柔らかい塩味とうま味が調和した、さっぱりとした味わいが特徴です。具には塩味を調和させるような甘味のある玉ネギや長ネギ、モヤシ、ジャガ芋などが合います。

米みそ、赤色辛口みそ

深い発酵香と塩味、うま味の調和した締りのある味がします。具には豆腐とアサツキ、庄内麩と三ッ葉、アイナメなどの魚と万能ネギなど、みその味わいをまろやかにする食品と薬味を組み合わせたものが合います。

麦みそ

麦みそ特有の発酵香と濃厚なうま味があるので、具もみそに負けない個性の強いものが合います。鶏肉と野菜や芋類(サツマ芋、ニンジン、ダイコン、ネギなど)を合わせたさつま汁や豚汁、ゆでて油で炒めた大根の葉などがよいでしょう。吸い口 (薬味)には粉山椒や七味唐辛子などを。

豆みそ

渋味と濃厚なうま味、若干の苦味が特徴です。具に一番合うのは豆腐。しじみ汁などもよいでしょう。豆みその調合みそである赤だしには、ナスがよく合います。

昔は薬としてみそが食べられていた、というのは本当ですか?

江戸時代のことわざに、「医者に金を払うよりも、みそ屋に払え」というものがあります。「本朝食鑑」(元禄8年・1695年)によると、「みそは、わが国では昔から上下四民とも朝夕に用い」たものであり、「一日もなくてはならぬもの」とされています。
また「大豆の甘、温は気をおだやかにし、腹中をくつろげて血を生かし、百薬の毒を消す。麩の甘、温は胃の中に入って、食およびとどこおりなくし、消化をよくし閉寒を防ぐ。元気をつけて、血のめぐりをよくする」などと記され、みその食効をうたっています。これは、東洋医学の医食同源の考え方からみそをとらえたものですが、みそが薬的な食品として認識されていたことがわかります。

世界中にはどのようなみそがあるのですか?

今日のみそは、古代中国の醤を先祖に持つとはいえ、日本で独特の製法によって造られ、完成されたものです。  そして、本家である中国、伝来経路に位置する朝鮮半島には醤から派生したみその仲間が多く見られます。
例えば、辛い豆板醤はソラ豆を発酵させて造ったものですし、甜麺醤(テンメンジャン)は甘みのある中国産の調味用のみそです。その他、ジャージャン、トウチなども料理によく使われます。韓国には、コチュジャンと呼ばれる大豆を発酵させた唐辛子みそがあり、韓国料理に欠かせないものになっています。
これに日本のみそ、しょうゆを加えるとでき上がるとされます。大豆を用いた発酵食品は、東アジアの食文化とは切っても切れないものといえるでしょう。

みその仲間にはどのようなものがありますか?

みその仲間で第一に挙げられるのは、しょうゆです。しょうゆの文字が日本で初めて現れるのは室町時代ですが、鎌倉時代には溜(たまり)が、中国から径山寺みそ(金山寺みそ)の製法を持ち帰った禅僧、覚心によって発見されたことも分かっています。これは、径山寺みその製造過程で出来る桶の底に溜まった液汁がおいしく、煮物に適することを発見したというものです。
この他にも、秋田地方に伝わる塩汁(しょっつる、魚醤)も、みその元祖である穀醤(こくびしお)同様、発酵塩」蔵調味料です。